「宿屋」を演じたY.Kくんの場合
行事ごとが大好きで割となんでも楽しむ息子、ページェントも楽しみなのだろうと思い、深く考えずに「Yは何の役やりたいのー?」と聞くと、「俺やりたくないんだよね。。」と一言。意外すぎる返答に驚きましたが、最近友達の目を意識するようになってきた息子のそんな思いもきっと成長だなと思って、頑張って口を出さずに見守っておりました。すると2週間ほど、「休みたいなーやりたくないなーやだなー」などと言っていた息子も、先生がページェントの話をしてくれたり、遊びの中で自然にページェントごっこを取り入れたりしてくれたおかげもあり、本人の中で消化できた様子。しだいに「博士がいいかな、宿屋さんもいいな、導きの星もいいしなー俺どれにしようか悩んじゃうな」とYらしい前向きな声が聞こえてきました。
どうやら今年のみどり組は気持ちが向くまでに時間がかかるからと担任の先生方が例年よりも早めにページェントに向けた話をはじめてくれたそう。全くその通りで、時間をかけてしっかり気持ちに折り合いをつけた息子。本当に子供たちのことをよく見て分かって下さっているなと感謝の気持ちでいっぱいになりました。
やりたくないと言っていたのはどこへやら、結局どれもやりたくて決めきれず、教室の片隅で、やりたい役を自分で紙に書いて「くじ」にして、それを引いて決めたようです。決まったのは宿屋さん。「俺宿屋にした!」と、無事に決まって一安心。あっという間にセリフも覚えて、やる気満々に毎日妹と歌を口ずさみはじめました。おかげで妹もほとんどのセリフを覚え、お風呂に入るのにもトイレに入るのにも、家中から「トントントン、宿屋さん」の声が聞こえてくるようになりました。
自分が決まった後も、毎日登園して一目散に行くのは、先生が作ってくれた役決めのための掲示。やりたい役の所に自分の名前を書いて、人数より多ければ話し合いになるそうです。息子も朝のお支度をする前に必ずふらーっと向かい、クラスの現状を把握しているようで、帰ってからも「今は天使と、ガブリエルと、マリアと博士が決まってなくて、BちゃんとCちゃんが話し合い中」と 毎日自分の役じゃないところにも思いを馳せているところに、自分が決まったらいいのではなくて、クラスみんなのページェント、みんなのことを考えられるようになったんだなと幼稚園での3年間の成長を感じました。
家では幼稚園で読んだ『やまあらしぼうやのクリスマス』という絵本を図書館で借りて読んでみたところ、妹がその本をとっても気に入り、毎晩読んで読んでと持ってきます。こんなに読んだらYのプレッシャーになりはしないかなと思ったのですが、読んでいるとYも一緒に来ては「あなたは私のこころのひかり」というフレーズを噛み締めているようでした。
迎えた当日、実はその日は母の誕生日。晴れやかな表情で「じゃあ行ってくるね、お母さん、聞いていてね!」と向かっていったY。聖壇の上で堂々と歌っている姿。
ついこの間、可愛い羊だったのに、いつの間にかこんなに大きくなってと、止まらない涙。自信に 満ちてキラキラと輝いている姿は、きっと一生忘れない人生最高のプレゼントです。
そして自分の息子だけでなく、全員の姿が本当に我が子のように思えて、あのいつも抱っこされていたA君が、恥ずかしがり屋のBちゃんが、本当にみんなが立派に嬉しそうに演じている姿に、なんて大きくなったんだろうと胸がいっぱいになりました。もも組の頃から先生方にどんな思いも、沢山沢山受け止めてもらって、今こうして大きく自信に満ちて輝いているんだなと、先生方に、友達に、共に歩んできた親御さんたちにも本当に感謝の気持ちでいっぱいです。こんなに熱い気持ちでいっぱいになったページェント、 どうかこれからも沢山の想いを乗せて続いていってほしいと願っています。
(Y.Kくんのお母様)
「語り手」を演じたF.Tちゃんの場合
2年前の12月、もも組全員がかわいい羊に扮して参加した初めてのページェント。おそらく意味もよく分かっていなかったかと思いますが、翌月には、みどり組さんが着た衣裳を借り、みどり組さんの演じた役を真似するページェントごっこが、もも組の子どもたちの間で流行りました。我が家の娘は、多くの女の子たちと同様に、真っ白な衣裳と羽をつける天使役がお気に入りでした。お友だちと順番に衣裳を身につけては、手をふわふわと上下させながら軽く弾むように膝を曲げる天使ポーズを真似ていました。
その後も、折に触れて「みどり組さんになったら何の役をする?」ときくと「天使がいい」と答えていた娘。その答えが少し変わってきたのは、みどり組になり、実際に役をいただくことが現実的になってきた頃のことです。「Fちゃん、天使やりたいんだよね?」、「……やっぱり違うのにする」。ちょっと気が小さくて、自己主張が苦手な娘は、天使をやりたい子が多いのではないかと思い、そうは言わないものの、協議やくじ引きをしなくても決まる役がいいと考えたのではないか、と思いました。
11月にみどり組で何度かページェントごっこを重ね、娘が選んだのは「語り手」でした。最初に聞いたときは意外な選択だと思いましたが、すぐに「なるほど」と腑に落ちました。娘が保育園の1歳児クラスの頃から、先生に「Fちゃんはお友だちが集まってわいわい遊んでいる様子を、いつも輪の一歩外からニコニコ笑いながら楽しそうに見ているんですよ」と伺っていました。物心ついた頃から周囲の人や物事を観察するのが好きだった娘。物語を俯瞰的に眺めて観客に伝える語り手は、確かに彼女にぴったりの役でした。天使は憧れの役ではありましたが、自分に合った役を自分で考えて選んだんだなぁと、感心しました。
全員の役が決まり練習が始まってまもないころ、帰宅後に娘のバッグを開けると、みんなに配られている赤い表紙のページェントのしおりとは別に、白い紙をテープで貼り合わせた、手作りの冊子が入っていました。中には娘の字で、自分が担当することになった語り手の台詞が書かれていました。そして、隣りのページには、語り手の衣裳を着てベレー帽をかぶり、ロザリオを首にかけ、にっこり笑った「じぶん」の絵が大きく描かれていました。娘が「競争率の高くない役でいいや」ではなく、「語り手がいい」と思い、心から楽しみにしているのだと改めて感じました。
ページェントの練習がどんなふうに進んでいるか、あれこれ尋ねる両親に、娘は「わすれた」、「ないしょ」などと言って、あまり多くを話してくれませんでした。それでも、お隣のきりグループさんの練習を見たことや、語り手チーム・羊飼いチーム合同で礼拝堂でこそっと練習したことなどをぽつぽつと教えてくれました。娘が台詞や歌を覚えて順調に練習しているのか、どんなことを感じているのか、もっと聞いてみたかったのですが、無理に聞き出そうとはせず、娘の気分に合わせて一緒に歌を練習したりしながら、当日を楽しみにして見守ることにしました。
そしてクリスマス礼拝当日。3年間成長する姿を日々見てきた子どもたちが役を演じる今年のページェントは、特別な感慨がありました。どの子も、一人ひとりが選んだ役にふさわしく、その子らしさを存分に発揮しながら役を全うしていました。
我が子はというと、入場時、顔には笑みが浮かんでいたものの、肩をすくめて歩く様子に、緊張感がこちらまで伝わってきました。語り手の登場は2回、大事な冒頭部分と物語の中盤です。手作りの台本に書き出して練習していた2つの台詞は、少し早口になったり詰まったりした部分もありましたが、無事観客に伝えることができました。そして最後まで集中を切らさず、大きな声で気持ちよさそうに歌っていました。恥ずかしがり屋の娘が、自分の力で緊張を乗り越えて演じきった姿に、美登里幼稚園での3年間の成長が凝縮されているようでした。
でも本人は、自分の演技以上に、ほかの語り手さんに台詞を耳打ちしたり、出番を知らせたり、立ち位置を指差して教えたりと、仲間のお手伝いに張り切っていました。その姿は、さながら小さな舞台監督。甘えん坊で恥ずかしがり屋と思っていた娘の、新たな一面を見た思いでした。それにしてもさすがにちょっとお世話を焼きすぎなんじゃないか……とハラハラさせられもしましたが、それも彼女らしい、彼女なりの、みんなとページェントを作り上げたいという気持ちの表れだったのではないかと思います。退場時には晴れやかな表情を浮かべ、軽やかな足取りで歩いていました。
さて、その日の夜、両親があれこれ感想を聞いても、娘は相変わらず自分からはあまり多くを語りませんでした。それでもぽつりと一言「やっぱ天使さん可愛かったなぁ。羽あるし」。あれ? そうなの? どうやら憧れは消えていなかったようですが、そう言ってにやっと笑う顔には、後悔の色はありませんでした。きっと、自ら選んだ語り手の役を演じきった納得感があったのでしょう。
クリスマス礼拝までの1か月間、今はまだうまく言い表せないさまざまなことを感じ、考えたのではないかと思います。この経験を少しずつ消化していき、いつか娘がどんな言葉でページェントを振り返るのか、楽しみに待ちたいと思います。
(F.Tちゃんのお母様)
「導きの星」を演じたA.Kちゃんの場合
初めてページェントを経験したももぐみの頃は、天使の役に憧れて、「天使ごっこをしたんだ!」と毎日嬉しそうにお話していましたが、きぐみでは、1番上で輝く導きの星の役に憧れ、「みどりぐみになったら絶対みちびき!」と宣言するようになりました。みどりぐみになり、役決めの中で様々な役を試しましたが、1年前の記憶が蘇ったのか、最後には「天使や語り手の衣装も可愛いけど、やっぱり導きの星になりたい!」と、かなり目立つ役柄を自ら志願。親の目からは、恥ずかしがり屋で、人前で歌ったり大きな声を出せるような子ではないと勝手に決め込んでいましたが、予想を裏切る我が子の選択に驚かされました。他のお友達が立候補しないか毎日ドキドキの様子でしたが、運良く誰とも競合せず、意中の役を射止めることに。それからは毎日ページェントの台本を家に持ち帰り、家族の前で台詞を披露しながら練習を重ね、無意識のうちに歌を口ずさむほどに仕上がりました。そしてクリスマス礼拝当日!聖壇中央で堂々と演じる姿と、その脇で歌う可愛いきぐみの星さんたちが歌う姿や、コロコロとしたももぐみの羊さんたちの姿のコントラストを目の当たりにし、見違えるほどの娘の成長の過程が脳裏に鮮明に浮かび上がりました。色々な思いが込み上げ、最後のページェントなんだな、と母は号泣(笑)終演後に「ママ、どうして泣いてたの?」と心配される羽目に。。ボロボロになったページェントの台本は、成長と努力の証。一生の宝物になりました。
(A.Kちゃんのお母様)
「博士」を演じたA.Tくんの場合
今年の冬の始まりは暖かく、ページェントはまだ先と思っていたものでしたが、突然園庭の落ち葉のかさも増して冬らしい寒さの日が増えてきた頃、親としての自分も急に焦りを感じ心がざわざわとするのでした。3年間の集大成としての大きな舞台を、我が息子がそつなくこなし無事に終わる予感がしなかったからです。「お母さんは信じて待ってあげてください」と、もも組、否、それ以前の保育園の頃から様々な先生に何度もご助言頂いてきたものの、元々早生まれの最後方で、身体も小さく常に病気がち。一人っ子で自分の思いが強く、原因は本人のせいだけではなく育て方の至らなさもあるに違いないとは思いつつも、様々な活動において皆と同じ行動ができないのが常でした。
もも組時の初めてのページェントでは決められた衣装を一切身に着けず、私服姿で観覧席にて先生のお膝に抱っこされるのが精一杯。一生に一度のかわいらしい羊さん姿を逃した落胆は親としては小さくはありませんでした。ただ、当時は我が子だけでなく、他にも同様のお子さんが若干名おられ、そこまで深刻に捉えることもなく、降園後の公園遊びを楽しんでそれなりに良い思い出の1日となりました。
翌年、き組の際は、さすがにもう成長しただろう、頭にお星様をつけて聖壇に立つことくらいどうにかできるかしら、もしかしたらお星様はつけないかな、とこちらも少し緊張しながらも、余計なプレッシャーを与えてはいけないと、あえて口を噤み当日を迎えました。結果は、お星様や衣装を身に着けるどころか、一人だけ聖壇にすら上がらず、またしても終始先生と観覧席。本来祈りの場であって我が子の晴れ舞台を鑑賞するだけが目的の行事ではないと頭では分かっていても、虚しさ、焦り、最後は「なぜ?」という半ば怒りにも似た感情まで湧いてくるのでした。
他方、その撃沈のページェント当日の前後あたりから、次年度への布石として体験させて頂いていた「ページェントごっこ」では青博士(三博士のうち青い衣装を着る博士)を希望して楽しんでいるという話が本人からも先生からも聞こえてきておりました。ページェントに関心があるのか無いのか、さっぱり理解ができませんでした。
しかしその本人の思いは嘘ではなかったようで、一年経過した今年の役決めの際にも迷いなく博士を希望したとのこと。定員の倍の応募のあるところに飛び込み、運良く役を射止めました。さらに、小道具としての贈り物を選ぶくじ引きでも第一希望の黄金が確定。あとは3色ある衣装の色を決めるのみとなりました。この調子で青衣裳で決められたらもうセッティングは完璧だ、などと思ってしまっていた私がはっとしたのは登園時の担任K先生の何気ないお言葉でした。「博士も、黄金も希望が通ったのだから、衣裳の色はお友達に譲るなどのやりとりが出てくるかどうか…、そうであったら良いなとも思いますがこちらからはそのように仕向けたりはしません。おうちでも様子を引き続き見ていてください。」
我が子の希望が叶う事だけにフォーカスしていた自分を恥じたのでした。結局息子からは殊勝な言葉は出ませんでしたが後から聞いてみると同じく青がよいと思っていた一人のお友達の譲歩によって博士3人のテンションが和らいだようで、本人は赤い衣装にすることで納得し、落ち着いたのだとか。この時の経験が「折り合いをつける」という本人にとっては新しい学びになったことは間違いありません。以前の息子なら「青になれなかったからもうやめた」となっていたはず。お友達の配慮、本人の成長、それら全てを包み込む先生の確かで温かな眼差し。様々な奇跡の結果だと感じました。
ちなみに、この①役柄→②小道具→③衣裳決めという一連の流れの最中に1週間近く風邪で欠席する期間が入ってしまったのですが、その時に役に立ったのがもも組のページェント後に一応購入しておいたDVDです。全体の流れや台詞、音楽に親しんでおくために在宅でも練習代わりに流し、ブランクを最小限にする事ができたと思います。もうひとつが、き組のクリスマスに“幼稚園に来られた”サンタさんから頂戴した絵本『ほしのかがやくクリスマス』です。親はすっかりその存在を忘れていたのですが、息子自身が本棚から出してきて熱心に読み始め、自分たちが演じるページェントとの比較をするなどして、その日に向け気持ちを高める努力を自ら行っているように見えました。前年までの様子を思えば、その姿はまさに神がかり的、本当に神様が降りてこられてこの子に働きかけてくださっているのではとさえ思えるのでした。
ページェント当日は、日頃自宅で洋楽を熱唱する姿からは想像もつかぬ緊張でこわばった顔が見てとれましたが、ソロの歌唱も台詞も全て無事に演じ切る事ができました。終了後の園長先生による涙声になりそうなお言葉を耳にしながらこちらも胸が一杯です。毎年ご覧になっているはずの先生方が、その年その年の子供たちのために心を尽くしてくださるのです。息子を以前から気にかけて下さっていた担任以外の先生方からも「すごかったね!」「よかったね!」とお声がけ頂き、夢を見ているようでした。これまで三年間の母子での葛藤はこの日のためにあったのだと思える、忘れられない日になりました。ここまでお導き下さった事、心から感謝致します。
(A.Tくんのお母様)
「羊飼い」を演じたY.Kくんの場合
美登里幼稚園では、緊張した子供たちがページェントに集中できるようにという先生方のご配慮から、ページェントでの写真撮影が禁止されています。
ページェント当日が終わって感動冷めやらぬ中でも手元に写真も無く、あるのはそれぞれの心の中の記憶だけ。
ママたちと、「もしかして夢だった?」と笑い合いました。
でも、カメラやスマホ越しではなく、しっかり目に焼き付けた子供たちの姿は宝物です。
写真屋さんが入って下さるので、プロが撮影した写真とDVDを楽しみに待ちながら、それまでは心の中でいつでも再生させられます。
私の記憶(多少偏っているかもしれませんが)を元に、息子のページェントを綴ってみたいと思います。
息子はとても引っ込み思案で、年少の運動会では大勢が見ている中で踊ることができず、指をくわえて立ち尽くしていました。
また、クラスのみんなの前で何かを発表することも難しい子でした。
年長になってからは、少しずつできるようになってきたと聞いてはいたものの、人前に出るのはまだまだ苦手な様子。
そんな息子が希望した役は羊飼いでした。
「羊飼いの杖は、お年寄りの杖とはちがうんだよ。羊たちを守るための武器にもなるんだよ」という先生の話が、かっこいい物が好きな息子に刺さったようです。
ページェントという特別な雰囲気の中、たくさんの保護者が見ている前で、果たしてセリフを覚えて声に出して言うことができるのだろうか…、と親の心の中は不安でいっぱいでした。
大勢の視線の中で、指をくわえて立ち尽くす姿が頭をよぎります。
役決めが終わり、ページェントに向けて毎日毎日たくさん練習を重ねるうちに、みどりぐみ全体がどんどん自信に溢れていく感じが、子どもたちから伝わってきました。
そして我が子も、自分の役に愛着を持って、歌やセリフの練習を繰り返して体に染み付かせることで、演じることへのハードルが下がって行ったように思います。
ページェント前日、朝起きると、「明日がページェントだね…今日が最後の練習なんだ…」と少し不安そうな息子。
「そうだね!お母さんたちの合唱も今日が最後の練習なんだよ!」と伝えたら、クリスマス祝会での保護者からの歌のプレゼントを楽しみにしている息子の表情が明るくなり、「お母さんたちも最後の練習なの!?」と。
幼稚園に行くまでの間、たびたび「お母さんたちも今日最後なんだもんね!」と言いながら、自分を励ます様子でした。
そして迎えたページェント当日の私は、「歌もセリフも覚えているし、大丈夫!」と自分に言い聞かせながらも、やはり心配が完全には消えません。
でも、息子はそんな親の不安を飛び越え、堂々と大きな声でセリフを言うことができました。
羊飼いの仲間たちと目を合わせながら「せーの」と声を合わせて「天使だ天使だ」と言った時の笑顔から、セリフが言えた達成感と、自信と、安堵が伝わってきました。
子どもの成長する力を間近で見せていただいたこと、その力を信じて支えてくださった先生たち、それぞれに与えられた葛藤や課題を乗り越えて練習を頑張ってきた子どもたち、共に不安を抱えながら励まし合ってきたパパママ、すべてに感謝の気持ちでいっぱいになりました。
園行事を終えるたびにいろいろな成長を感じてきましたが、3年間の集大成であるページェントをやり遂げたという経験も、これからの人生で大きな支えになってくれるのだろうと思います。
(Y.Kくんのお母様)
「語り手」を演じたC.Sちゃんの場合
「あと何回寝たらページェント?」
12月に入ってから、何度この質問が飛び出したことでしょうか。
「楽しみすぎる!髪はふたつ結びね!!」
アドベントが始まると子供だけでなく、親もだんだんとクリスマスへの気持ちが高まって、練習にも熱が入ります。
「ママ見に来るよね?絶対絶対来るよね?」
「必ず行くよ、楽しみにしてるよ」
ページェント前日の夜、明日着て行く服はこれ!と枕元に準備して、気合い十分です。
当日の朝、早起きをして、ベッドで着替えてからママ朝だよ、ページェントだよ、ご飯食べて行くよ!と絶好調。
おばあちゃんもきてくれて、いざ、出発です。
教会の席につき、こどもたちを待つ間、これまでのページェントを思い返していました。
もも組の羊さんの姿、き組のお星さまの姿、かわいかったなあ、今年はどんな姿を見せてくれるのかな。
姉が演じた「天使」の役にあこがれて、いつも手をひらひらと振ってお歌を歌っていたC。
でも、決まった役は「語り手」。
Sくん、Fちゃん、TくんとCの4人でやるって、自然に決まったの、最高でしょ!と、満面の笑顔。
3人姉妹の末っ子で、お姉ちゃんの後ろ姿を必死でついていっていた時代は過ぎて、素敵なお友達に導かれて、自分の好きな道を歩いて行くんだなあと、成長を感じさせてくれました。
さあ、いよいよページェントが始まりました。
みんな、頑張ってね!と祈ります。
4人の語り手たちは、少し照れくさそうに前に出てきました。ちょっと緊張気味かな、でも、お互いに助け合って、上手に言えた!よかったね!!
「語り手がいないと場面が動かないんだよ、歌とかはないけど、大事な役なの。」との言葉通り、4人の力で場面を切り替えてくれました。
一人ひとりの笑顔が輝く、素敵なページェントをありがとう!!
(C.Sちゃんのお母様)
「羊飼い」を演じたS.Iくんと天使を演じたM.Iちゃんの場合
「今夜は星がきれいだね。」一か月前のページェントを思い返すと真っ先に浮かぶのが、Sのこのセリフです。この先きれいな星空を見たらきっとこの日を思い出すことでしょう。堂々として、心のこもった言葉でした。続いて目に浮かぶのは、ひらひらと登場する天使役のMの姿。振りを覚えているのかいないのか、お友達を見てワンテンポ遅れながらも、一生懸命動いている何とも微笑ましい様子でした。
幼稚園でページェントごっこが始まった頃、やりたい役を聞いてみると、Sからは「導きの星!」と元気な返事。「これまでの導きの星のみどり組さん、かっこよかったよねー。お母さん覚えてるよ。」と返したものの、去年、一人だけ星の印をつけていなかったSの様子が思い浮かび、大丈夫?という言葉をぐっと飲みこんでいたのでした。
希望者が多かった導きの星を誰が演じるかは、子どもたちが話し合い、じゃんけんで決めることになりました。納得してじゃんけんをしたものの、希望がかなわず悔しい気持ちがなかなか抑えられなかったようです。それでも気持ちを何とか切り替え、次は羊飼いを希望。3人の役を4人が希望し、また話し合いになりました。Sは結局羊飼いになることができましたが、「(希望が通らなかった)XXの分もがんばるってことだよね」とつぶやいたとか。担任の先生がつぶさに教えてくださった役決めの過程に、自分の思いを伝えつつも、お友達の気持ちも思いやれるようになった成長を感じました。
一方のMは、希望通り天使の役に。あっさりと決まったようですが、ほかの役を誰がやりたくて、どのように決めたか、自分からいろいろと教えてくれました。ページェントのしおりを持ち帰った日には、最初から最後まで、声に出して読み上げています。Sもときどきちゃちゃを入れ、幼稚園での様子が目に浮かんできます。ただ、こっそり期待していた双子ならではの事前練習も、それらしきものはその一回だけでした。Mにセリフを聞いてみても、答えは返ってきたりこなかったり。家ではやりたい放題ですが、人前に出ると、蚊の鳴くような声のお手本のように話す娘です。これで当日大丈夫かしら??
12月も半ばになると、「ページェントの日は風邪をひいて休むんだ」と言い出すS。「XXくんの分も頑張るんじゃなかったの?」と聞くと、むにゃむにゃと歯切れの悪いこと。大丈夫かしら??? それでも、練習が進んでいそうなのは何となく伝わってきます。ページェントの時にドキドキしたら、手のひらに「人」って書いて飲み込むといいんだよと言ってみると、それは二人ともしっかり練習していました。
いよいよページェントの日。当日の教会では、これが本当のクリスマスなんだなぁと感じられる、静かで温かい時間が流れていきます。優しいピアノの音が流れ、緊張している子、ワクワクしている子、いろいろな表情が見られます。どの役も、みんな大事に頑張っているのがとてもよく分かります。私にとっては3回目のページェント、大切なお祝いだということが伝わってくるのは毎年同じながら、それぞれの個性で少しずつ違っていて、わが子たちがみどり組になって迎えるこの日は特別でした。お友達に次の動作をささやくS、セリフもはっきりと話しそつなくこなしたM。先生に抱えられて教会に入ってきたもも組のときには想像もつかなかったくらい、しっかりと大きくなっている子どもたちでした。
卒園が現実のものとなってきた今、ページェントは、準備の期間も含め、子どもたちを大きく成長させてくれた時間だったと改めて感じます。母の荷物を持ってくれるSに、お店で店員さんにしっかり声をかけられるようになったM。どちらも自信がみなぎっているのです。ページェントの後に、もも組のお母様からすごかったね、うちの子もできるかしら、と声をかけていただきました。大丈夫ですよ、だって、美登里幼稚園の3年間はこんなにしっかり育つ時間なんですもの。
(S.Iくん M.Iちゃんのお母様)