東京2025デフリンピック直前のこの時期に、デフリンピック日本代表選手である岡田海緖選手をお招きして、保護者を対象とした講演会を開催しました。

参加してくださったどの方も、目と耳と心と手をたくさん動かしながら聴いてくださいました。
岡田選手のお話の内容や参加者アンケートの一部をまとめましたので、どうぞご一読ください。そして11月には、ぜひお子さんと、デフリンピックの応援に行きましょう!(なんと観戦無料です!)
【講演会概要】
日時 | 9月8日(月) 10:00〜11:30(保育時間中) |
場所 | 礼拝堂 |
テーマ | 東京2025デフリンピックを親子で応援しよう! |
ゲスト | デフランナー 岡田海緖選手 (デフリンピック日本代表800m、1500m、4×400mリレー) 手話通訳 保科隼希氏 |
☆デフリンピックとは?
「デフ(Deaf:耳がきこえない)」と「オリンピック」を合わせた言葉で、きこえない・きこえにくいデフアスリートのための国際スポーツ大会です。4年に一度開催され、2025年には、なんと100周年の記念すべき大会が、日本で初めて開催されます!世界70〜80の国・地域から選手が集まり、21もの競技が行われます。(開催期間: 2025年11月15日~26日)

【お話の内容(抜粋)】
・耳がきこえないとは?――「かわいそう」ではない!岡田選手にとっては「ふつう」
・普段の生活の様子――目で情報を得る工夫をしている(例:インターホンは音でなく光で知らせる)
・すぐに親子で使える手話――応援で使える手話「がんばれ」、表情が大切な手話「好き・嫌い」、スポーツの手話「水泳」、食べものの手話「ケーキ」などなど…
・デフリンピックの特徴――手話でのコミュニケーション、スタートランプ(音の代わりに赤・黄・青のランプでスタートの合図を伝える装置)や旗などの活用
・積み重ねてきた競技生活――陸上競技を始めるも苦しんだ高校時代、健聴者と共に競技に励んだ大学時代、初出場した華やかなデフリンピック・トルコ大会、コロナ禍で悔いの残ったデフリンピック・ブラジル大会(日本選手団が大会途中で出場辞退のため本命の800mに出場できず)
・大切にしていること――感謝の気持ちを忘れないこと

【参加者アンケート(抜粋)】
・岡田さんはとても清々しく太陽のような笑顔で、見ているだけで元気をもらえました。
・手話での講演会は初めてでしたが、海緒さんの手話に目が離せませんでした。それはまるで舞台のようだったとおっしゃる方と同じ思いで、それは表情だったり、手話の一つ一つから伝わるものから熱量を感じたからだと思います。 保科さんの手話通訳もすばらしく、気付いたらまるで海緒さんがお話されているかのように錯覚していました。あれ、海緒さんの声は聞いてないよなと後から思い返すほどとても自然な手話通訳で感動しました。
・「聞こえない以外は一緒」という言葉がとても心に残りました。
・今まで「耳が聞こえないなんて、大変そう!」と知りもしないのに強くそう思い込んでいました。すごく構えてしまっていた自分に気づきました。
・恥ずかしながら、耳が聞こえない方に対して「自分にできることはない」「違う世界に住んでいる」という認識が根底にあったというのが率直なところです。しかし、岡田さんの「自分はただ、耳が聞こえないだけ」という言葉にはっとして、勝手に壁を作っていたのはこちらだったと考えを改める機会になりました。
・この講演を通じて一番心に残ったことは「伝えようとする気持ちの大切さ」です。
・手話や視覚支援があることは聞こえる人にとって不便なことは一つもなく、理解しやすくなるだけなので、デフリンピックをきっかけにどんどん広がって行くといいなと思いました。
・海緒さんのお話をうかがって、目標になかなか届かない日々や、聴者との共同生活、コロナなど、あらゆる困難がありながらも、夢に向かってひたむきに努力をし続ける姿に胸が熱くなりました。
・なかなか結果が出ない中、目標にむかってあきらめない強い思いがとても素敵で素晴らしいと思いました。デフリンピックでもご活躍され、メダリストとなった今でも周りの方へ感謝を忘れずにいる姿勢にはとても感銘を受けました。
・デフリンピックがぐっと身近に感じられ、開催が楽しみになりました。
・デフリンピックには子供と一緒に観戦しに行きたいと思います。
・今回の東京2025デフリンピックがどうなるのかとても楽しみになりました。 会場にも足を運び、教えていただいたサインエールを使って親子で応援したいと思います‼︎

改めまして、みなさま今回の講演会にご参加くださりありがとうございました!
参加がかなわなかった方も、心を寄せてくださりありがとうございました。
ろう者(きこえない・きこえにくい人)と出会うことが残念ながらあまり多くはない世の中。
今回の講演会は、当事者である岡田選手と出会い、その生き方をうかがうことのできた、大変貴重な機会となりました。
そしてそれは、岡田選手の人としての魅力や手話という言語の魅力にあふれた時間でした。また、その岡田選手の言葉を心から理解することができたのは、架け橋となってくださった手話通訳士の保科様のおかげでした。
自分の普通は、誰かにとっては普通ではない。
それでいて、違うところは果たしてどれほどあるのでしょうか。
ろう者は、決して、違う世界に生きる存在でも、助けなければいけない対象でもありません。ともに生きる一員であり、きこえない人・きこえる人のほかにもいろいろな人がいて……どうしたら互いにより生きやすく、より豊かな世界にできるのでしょうか。
手話ができなくたって良いのです。伝え合う方法はいくらでもあります(逆にきこえる人同士でさえ、うまく伝え合えないこともあります)。
コミュニケーションにおいて根本的に大切なことを、ろう者と出会うと気付かされます。それは、相手と向き合うこと、目と目を合わせて話すことの大切さです(互いを見ていなければ言葉が届きません)。
そんなことは当たり前だと思われるかもしれませんが…きこえてしまうからこそ失いそうになるものもある気がしてなりません。
(と偉そうにつらつらと書いていますが、私自身、余裕をなくして子どもたちの目を見られていないことがたびたび…。日々反省です。)
デフリンピックの会場では、選手はもちろん全員ろう者ですが、スタッフや観客もろう者が多数派・きこえる人が少数派という世界が広がっています。子どもたちにも、本物に出会って、理屈ではない何かを体感してほしいと願っています。
みなさんぜひ実際に、ご家族と、お友達と、足を運んでみてください。多くの子どもたちに、出会いの機会を与えてあげてください。
最後になりましたが、デフリンピック直前の時期にもかかわらず、美登里幼稚園のためにお時間をつくってくださった岡田海緖選手、保科隼希様、本当にありがとうございました。
東京2025デフリンピックをはじめ、今後のますますのご活躍を心からお祈りしております!
文化係では、今年度中にもう一回、別のテーマでの講演会を予定しております。そちらもどうぞお楽しみに!
ひつじの会 文化係(年中組保護者T.Y.)