宝物バケツ

おしらせ/幼稚園の生活

みどり幼稚園には、
入園の時にハサミやクレヨンと同じように
全園児に与えられる物として、
「宝物バケツ」

というものがあります。

半径10センチ程の、プラスチックでできている、透明な円柱型のバケツです。
下駄箱やロッカーと同じように、
自分の名前と目印のマークの貼ってある、
自分だけのバケツ。

入園して、これをもらうためにオムツを卒業した子がいるほど、
憧れの、自分だけの宝物バケツです。

子供の想像力は素晴らしいもので、
このバケツ、見ていると本当にたくさんの使い方があるようです。

春にはおおかたのバケツがビオトープのオタマジャクシでいっぱいになります。
ある時は、一生懸命サラサラにした白い砂をためておいて、砂遊びに使うため
またある時は、園庭中に落ちているどんぐりを拾うため
他にも、水を汲んで川にしたり、
捕まえたダンゴムシを入れて観察したり
土でいっぱいにしたバケツの中に
何だか分からない実や種を植えて毎日水を上げて芽が出るのを待っている子がいたり
1日かけて磨き上げた自慢のツルツルの泥団子を壊したくなくて、何日も何日も宝物バケツに入れてとっておく子もいます。

我が家の長女は、もも組の一年間、
この宝物バケツに大変助けられました。

入園してまだ慣れない日々の中、
知らない場所で、中外構わず縦横無尽に走り回っている先輩たち。
先生はいつも不安だと一緒にいてくれるけど、
それでも不安で、嫌ではないけど、足が進まない。行ってしまえば楽しいけれど、
段々登園の足取りが重くなり、口数が少なくなっていく。

そんな中、道端に咲いているたんぽぽや、綿毛、落ちている花びらや、綺麗な石ころなど、足元の宝物を見つけては、宝物バケツに入れよう!と拾って、一歩一歩進み、気づけば幼稚園に着いていました。

なかなか時間がある日ばかりではなく、
鬼の形相で子供を自転車に担ぎ込んでギリギリに滑り込む日がほとんどではありますが、
すっかり幼稚園に慣れた後も
少し時間のある日にはそんな道中の探検を楽しみに、いつしか子供の方から、歩いて行きたいというように。

梅雨には紫陽花を、
秋にはどんぐりを、
金木犀の花は落ちているものをいくら沢山拾ってもあまり良い香りにはならないことを知りました。

きっとあと2年。
小学校に上がると、8時前には1人でサクサクと行ってしまいます。
土日も気がつけば自分で友達と約束をして、
自転車でスイスイ行ってしまいます。

あーまた今日も遅刻だよー急いでー
と言いながら、
寒いねと手をぎゅっと繋いで、
宝物を沢山入れた小さな手を
見て見てーと見せてくれたこの時間は、
親にとってもきっと戻ることのない大切な宝物になるんだと思います。

ただただ毎日を生きることに精一杯で、
通り過ぎてしまう毎日に、
こんなに豊かな宝物が転がっていることに気づかせてくれた幼稚園と宝物バケツに
感謝を忘れずに、
今日も駆け抜けようと思います。

              年少組保護者K