今、思うこと〜園長のバトン〜

おしらせ/幼稚園の生活

今、思うこと(関本先生より)

 ちょうど2年前の3月に突然保育がなくなるとは思ってもいませんでした。2020年2月27日の夜、政府からの一斉休校要請が出され、やむを得ず休園となりました。結局5月いっぱいまで通常保育はお休みとなりました。

 それからの2年、新型コロナウイルス感染をめぐって、保育の場もご家庭もずいぶんたくさんのことに心を揺さぶられてきました。葛藤しながらも歩みを共にして下さった保護者の皆さまには、あらためて感謝の思いでいっぱいです。

 例年とは違う2年でしたが、例年にはない楽しさや体験、そして気付きが生まれたことも嬉しいことでした。

 今、子どもたちはオミクロン株感染予防の中ではありますが、できる限り日常を取り戻せるよう配慮しながら、日々落ち着いてまた嬉々として過ごしています。

 遊びの創造的な取り組みと、同年齢異年齢との深い交わりが園のあちらこちらで見られました。

 日本中世界中の子どもたちの親や保育(教育)者は未だ終わりの見えない新型コロナウイルスとの共存を受け止めつつも、ため息や嘆きをもらしています。それは感染症への不安や恐れからでもありますし、不自由さや閉塞感からでもありましょう。そして子どもが、このような数年を過ごす事に残念と思い、またこのことが、心身の成長や学びにどう影響するだろうかを、心配しています。

 私にとっても様々に思いをめぐらした2年でした。だからこそ、保育の中では、目の前の子どもたちが、もの・人・自然・ことば・絵本(ファンタジーの世界)等にたっぷりと出会い、心身を動かして過ごせるように、先生たちと創造力を働かせ、祈り合わせて過ごしてきました。その姿勢はこれからも変わらずに持ち続けたいと思います。しかしながら、今感染力の強いオミクロン株は病床数や、幼児、若年層の感染者数からも、これまで以上の注意を払う必要があります。子どもやご家庭への配慮はもちろんですが、心休ませる間もなく働いておられる、医療関係者や介護関係者の方を覚えることも忘れないでいたいと思います。災害時とも考えるべき緊急事態に集団の場としては、まず命(健康)を大切にする選択をしてきました。そしてできる限り感染予防をしたうえで、私たちは子どもたちの幼稚園での時間が子どもとしての豊かな時間となれるように、心を尽くしてきました。

 ご承知の通り、保育は近づかない・触れ合わない・声を出さない⋯ということでは成り立ちません。子どもは保育者や子ども同士との相互の関わりを通して、心身共に育っていくものです。そう思うと完全な予防はできないことに不安は残りましたが、手洗い・マスク・換気などの基本的な予防を続けながらゆっくりとこの一年を過ごしてきました。週ごとに、又は数日ごとに見直しながら歩んできました。

 最後に子どもがいつの時も私に教えてくれている「希望」を書かせていただきます。私たち大人は、これまでの経験や期待から今を引き算で捉えて「あれができない」「前はよかった」とついつい憂いてしまいます。しかし、子どもは「今」に光をあてて生きています。周りの大人が今を大切にし、前に向かっていればなおさらです。そう!子どもは今日の生活と遊びの中での体験や関わりや、おかあさんや先生と歌った歌や、読んでもらった絵本に「楽しかった」「難しかった」「ドキドキワクワクした」「おもしろかった」「明日もきっと良い日になる」と感じ、それらを毎日足し算にして心のポケットに蓄えているものです。それは幼稚園でもご家庭でもです。そこが子どもの素敵なところ!私はそう思ってきました。

 例えば、一匹のミミズ、一つの泥だんご、一枚の絵を描くことに夢中になり、疲れを知らずに走り続けたり、空想の世界でごっこ遊びを楽しんだり、喜んでお手伝い出来る子どもの時って幸せなことです。

 ご一緒にそのことに希望を持ち「大丈夫、子どもは今を生きている、落ち着いて暮らそう」と思っていきましょう。

 この子は何を見つめ、何に心をとめ、何を楽しんでいて、何に不安を持っているかを感じて、必要なところで支え、ちょうど良く距離を置いて、待ってやりながら、今のこの体験が、きっと未来につながっていると信じていきましょう。

 子どもにとっては、信頼できる人がいれば、不自由な体験も大事な体験となります。

 冒頭に書いたこと以外にもコロナ禍の子育てには、苦悩もありますね。春の始まりのこの時、私はすべてが益となるようにしてくださる神さまに委ねながら、保護者の方々と、この時期を共有し、思いを分かち合い、時に励まし合って過ごせましたことに感謝いたします。

 ありがとうございました。

「主は隣れみ深く、恵みに富み 忍耐強く、慈しみは大きい」  詩編 103篇8節

2022年4月より園長が安心院敏子先生にバトンタッチされます。

心をこめて バトンをつなげます.

新園長先生の上に神さまの祝福が豊かにありますようにと祈ります。

2022.3.31 関本泰子

安心院園長誕生